ドミトリー、ゲストハウス、ホステルというのは別々の名前を冠しているけど、要するに1つの部屋に2段ベッドがいくつか格納されていて、シャワー・トイレ・キッチンを共用で使う宿のことを指す。
小さい宿ではベッドが2つ、大きい部屋ならベッドが10台以上あることもザラで、同じ宿でも人数が多い部屋の方が基本的に料金は安い。
写真でいうとこんな感じだけど、こんなのは新しくてキレイなほう。
修学旅行なんかだと仲の良いクラスメートと畳に雑魚寝するけど、こういうドミトリーでは隣や上下のベッドに国籍も人種も言語も宗教も違う赤の他人が寝るということになる。もっとも「旅日記」なんていう多少マニアックなこのブログを読んでいる人ならドミトリーに泊まったことが1回くらいありそうだし、こんな説明なんていらないかもしれない。
さて、ドミトリーではたとえ短期間とはいえ色んな国籍や年齢や職業の人と共同生活をするわけであるが、問題点としては「お金さえ払ってしまえばセキュリティーチェックも何もない」ことがある。
いちおうチェックインの時にパスポートのコピーを取る宿がほとんどだけど、さすがに部屋の中に防犯カメラがあることは滅多にない。
泊まる人のほとんどは僕も含めて学生だったり就職してまだ間もない20代の若者なので、言ってしまえば素行がいいし少し会話すれば素性も明らかになるんだが、可能性としては犯罪者が紛れ込んでいることだってありえる。
実際僕はこれまでにホームレスだとか失業者だとか違法就労者だとかに何人か会ってきたけど、気づいていないだけで窃盗癖や異常性向を持っている人の隣で寝たこともあると思う。そんな経験も踏まえて「ここには絶対に気をつけるべき」みたいなポイントを列挙してみた。
目次
1. 挨拶すべし
まあこれはやっぱり一番最初に挙げておくべきだろう。僕はそこまでフレンドリーな人間ではないし、基本的に他人と喋るのは面倒だと考えてしまうタイプだけど、逆にそんな僕が言うんだからまず間違いない。
自分がチェックインして部屋に入った時、逆に新しく誰かが部屋に入ってきたときには笑顔でHelloと言うのが世界共通の鉄則。一回ここで挨拶を交わしておくだけでその後何かがあった時にスムーズに情報交換できる。ちなみにHelloの発音というか言い方だけでけっこうその人の国籍とか人格が分かったりもするので面白い。
あと笑顔について。笑顔は人間が言語を習得する以前に、他の集団や個体に対して敵意を抱いていないことを表明する合図だったと言われている。だからこれが国境を越えるのは当たり前。よっぽど疲れていて顔の表情ひとつ変えられない時を除いて、少し頬を緩めるくらいは最低限しよう。逆にそれすらできないほど疲れているならカーテンを閉めて寝てた方がいい。
2. 荷物は置くな
盗難があっても宿は何もしてくれない。すべて宿泊者の自己責任。僕は信用していないから基本的に使わないけど、もし宿のロッカーが壊されて荷物がなくなっても宿が対処してくれるとは限らない。そもそもそれまでの通過国のスタンプが押された愛着のあるパスポートを奪われたら、そのほか過去の思い出の詰まったものを盗まれたら、代用なんてできるはずがない。現金を盗まれた方がいつか稼ぎ返せるからマシ。
ちなみに過去に、フロントに強盗が入って宿泊者のパスポートやBRPカード、現金がごっそり盗まれた事件があった(@リバプール)けど、宿としては盗難証明書っぽい紙きれを発行してくれただけだった。だから少なくとも安い宿は信用してはいけない。
とは言ったものの、常にバックパックを担いでトイレやシャワーに行くことは面倒だし邪魔くさい。だからまずは「旅の荷物は必要最小限に」という金科玉条のもと、盗まれそうなものは最初から省こう。それだけで神経を使う回数が減らせる。次に「なくなったらゲームオーバーなもの」、つまりパスポートとクレジットカードを絶対に死守しよう。僕はベストの胸ポケットにパスポートを入れてチャックを閉め、暑くなければその上から別の服を着るようにしている。暑い国ではどうするかというのを最近ずっと考えているけど、マネーベルトだったりは逆にそれを奪われたらゲームオーバーなので実はあまり推奨されていない。首紐タイプは後ろからいきなり掴まれて首を絞められる事件もないわけじゃないし、これまた少し危ない。靴の中敷きと靴底の間という隠れた安全地帯もあるけど、例えばクレカをそこに入れてたらいつか折れる。南米旅行者でジップロック2袋に300ドルずつ入れて靴底に隠し、万が一強盗に身ぐるみ剥がされたときのために備えている人の話を聞いたことがあるけど、これはできそう。あと重要書類はスキャンしてPDF化してクラウド上に保存しておけば、盗難にあってからの手続きがいくらか楽になる。
最後に「盗まれてもしゃあないと思えるもの」、たとえば食料とか衣服とかについてはもう無頓着でもいいと思う。そのくらいの被害で済むなら安いものだ。ただ一般的にはベッドの上に荷物をまとめてから掛け布団をかけることで、心理的に窃盗へのハードルを1段階上げることができるらしい。どうしてもスマホを充電しておく必要があって、かつ部屋から出るときには、部屋の誰からでもよく見える位置で充電するか、逆に目立たないコンセントを探してスマホもケーブルも隠すのが次善の策だろう。
3. 朝晩は静かに
僕は山小屋に泊まった経験も何度かあるのだが、特に山小屋で日が沈んでからガサゴソしていたら怒鳴られることがある。もっともこれは数十年前の登山記に「最近はマナーの悪い登山客を張り飛ばすベテラン山男がいなくなった」みたいに書いてあったので、現代でそんなことはまずないとは思うけど迷惑であることは今も昔も変わりない。
だいたい山小屋の場合は日没後7時くらいから周りに気を配りはじめて、10時から3時くらいまではサイレントタイムみたいな暗黙のルールがある (※山によっても全然違う)。もちろん暗黙だから破ってもペナルティーがあるわけじゃないけど、荷物のパッキングや整理をパパっとできない人間が経験豊富なはずがない。登る資格があるのかすら疑われる。
バックパッカーもそうで、そもそも荷物が多い人って旅慣れていない。旅の経験値が上がるほど荷物は少なくなり、すべての所有物を把握しているからパッキングも一瞬で終わるものだ。日が暮れるぐらいに誰ともなく照明をつけるのだけど、同じように夜遅くなったら誰ともなく消灯となる。たいていスイッチに一番近いベッドに寝る人がこの役割を果たすのだが、寝たい人が突然パチンと消すことも多い。
さて、ここでドミトリーで一番と言ってもいいほど迷惑な同室者は「消灯後にズカズカ部屋に入ってきてビニール袋をゴソゴソする人」である。ビニール袋って起きているときはそこまで気にならないけど、寝てる特に近くであの周波数の音を立てられるとかなり睡眠が妨害される。人の話し声の方がまだ許せる。それも気になるけど。
ところが、
夜泣きにはビニール袋の音が効果あり!「羊水」の音に似ている 28歳 R.E.さん
他の人はビニール袋の音って気にならないのかな、と思ってちょっと調べてみたらこんな記事があった。でもビニール袋を擦る「カサッカサッ」という音と、袋の中身を取り出したり探し物をしている「ガサガサ」という音では随分違うと思うんだが、、、
みなさんビニール袋の音って気になりますよね?
4. できるだけ清潔に
僕は旅行中ほぼ毎日洗濯する。気温が低かったり、翌日チェックアウトだったり、シャワー室が極度に汚なかったりすれば話は別だけど、それ以外は自分でチャチャっと洗ってベッドの枠に掛けて部屋干しする。
そこで問題になるのが臭いだ。熱湯に漬け置きしたらたった数分でも雑菌が死滅するので問題ないんだけど、生ぬるい程度のお湯で適当に洗剤をつけて洗うとむしろ逆効果になる。そして部屋の中はそこまで風通しがいいわけではないし、生乾きの時間が長い。
他人の臭いに敏感な人は、というか基本的にデリケートな人はドミトリーに向いていないわけだが、しかし悪臭とは多くの人間が嫌いだと思うから悪臭という名前を付けられるわけで、生乾きの洗濯臭が好きな人はなかなかいないと思う。「消臭スプレーを使えばいいじゃん」と思ったあなたはまだまだ甘い。バックパッカーでそんなものを待ち歩いている人なんて少数派だ。
そしてもう一つ臭いの発生源がある。そう、濡れた靴の臭いだ。かく言う僕もたまにこの大罪を犯してしまうのだが、何時間も歩き回った人間の靴が部屋の中に複数あったらたまったものじゃない。これもれっきとしたペナルティーのない犯罪である。
そして最後に「生乾きの洗濯物」と「靴の臭い」、そしてそもそもの「体臭」にどう対処すべきか書いておくのだが、これはもう「慣れてください」としか言えない。人間の五感のなかでもっとも鈍りやすいのは嗅覚だ。最初はきつい臭いだろうがいつしか気にならなくなる。それまで口で呼吸しておくか、もしくは部屋を変えるしかない。
あと、同室者のみなさん僕の靴が臭かったらこめんなさい。
5. みんな旅仲間
最後にいいことを書いて終わろうと思う。
ドミトリーに泊まっている人は、国籍もバラバラでこれまでの旅行経験もマチマチである。当然自分がこれから行こうとしている国に行ったことがある人がいたりするし、逆に日本に行きたがっている人は多い。その宿の周辺エリアについてだったり、その国全体についてだったりについて、新しく来た人はすでに数日過ごした人から有益なアドバイスを得ることができる。だから情報交換はとても大事だ。
これは決して観光名所の良しあしだったり、おいしいレストランだったりだけではない。もちろんそういう情報も有益なんだけど、一番旅仲間のコミュニティーが発揮されるのは治安が悪い場所だ。以前パキスタン旅行中に、アフガニスタンに行こうとしている40代のアメリカ人のおばさんがいた。彼女は同じ宿にいた140カ国ほどを旅行してきたカナダ人や、宿のスタッフから様々なアドバイスを受け、最新の情報で危険とされているエリアを避けつつ首都カブールまで行くことに決めていた。まああのおばさんの雰囲気だったらアドバイスがなくてもカブールまで突っ込んでいたと思うけど、情報があった方がいいに決まっている。
大使館や外務省が公式ホームページで発表している治安情報や、最新のネットニュースも大いに参考になるから目を通しておくべきなのは当然だけど、でも刻々と変わる情勢というのは実際に現場にいて肌で感じていた人から聞くのが一番分かる。その人の伝手で安全を確保することだってあるだろう。あと現地に住んでいる人と旅行者では、安全に対する感覚だったり注意する観点が微妙に違うこともある。旅行者にとって有益な情報は旅行者が持っていることが多い。
話は変わるが、「宿のスタッフ」vs「宿泊客」という構図が生まれることもある。一番いい例が上で述べたような、宿が強盗に遭って宿泊客の貴重品が盗まれたパターン。その事件は深夜に起きたのだが、スタッフが即座に客を集めて発表するなどの対処はなく、僕がチェックアウトしようとして初めて明らかになったようなものだった。僕はその時近くにいた別の宿泊客数人に「お前このこと知ってるか?」と聞いたけど誰も知らされておらず、客の数人が団結してスタッフに詰め寄るような形になった。
「腐敗した警察」vs「旅行者」、「現地の詐欺集団」vs「旅行者」、「排外的な集団」vs「旅行者」という構図だってあり得るだろう。それを見かけたとき、少なくとも僕は旅行者の一人として、別の旅行者を助けることを誓っている。同じ屋根の下で眠るもの同士、困ったときはお互い様である。