「書き出しがよければその本が売れる。結末がよければ次の本が売れる」らしい。
確かに国語の教科書に載っていた作品を思い返してみると、だいたい書き出しと結末がキマっている。
今回は特にその書き出しについてのお勉強。あとは表現技法についてもいくつか。
書き出しのパターン
1)擬音で始める
ドシン、トントントントン、など。
⇒映画だと、ドアが閉まる音とか、車のスキール音とか、足音・息遣いなんかのシーンで始まりがち。
2)会話で始める
「子ども、生まれた?」など。
⇒映画だと、ナレーションとか、登校前の家族の会話とか、もしくは回想・教誨だろうか。
3)動きのある行為から始める
緊張感のある場面。交差点の角でぶつかる、など
⇒映画だと一番多いパターンな気がする。逃走シーンとか、犯行の現場(ただし犯人の顔は分からない)とか、風景や街並み、人の動きとか。
ただし主要テーマを最初から持ち出すと、読者がついてこれない。
NG)弁解
逆にNGの書き出しとして、「私は文章がうまくないので」とか「メモしてなかったので細かいところは忘れてしまったが」とか「書きたくないけどしかたない…」とか、言い訳で始めるのはよくない。
ただし下書きの段階ならあってもよい。見直して削除すればよい。
修飾語のテクニック
1)重ね言葉を使う
てくてく歩く、しとしとと降る、など。初心者でも使いやすい表現なので、意識してみると表現の幅が広がりそう。
2)和語を使う
和語を使うと表現がやわらかくなり、漢語を使うと表現が固くなる。ひらがなと漢字の違いもありそう。
「全然」⇒「いささかも」、「無数の」⇒「ふんだんに」など。
3)接頭辞のついた形容詞を使う
「暗い」⇒「ほの暗い」、「汚い」⇒「小汚い」など。
単純な形容詞が連続しそうになったら、ちょっと接頭辞や接尾辞を加えてみよう。
4)比喩
大学で認知言語学の授業を取っていたことがあるが、比喩を厳密に分類すると以下のようになるらしい。
いちいちどのカテゴリーに属するか考える必要はないと思うが、「そう来たか!」と思わせるような事例を使ってみたい。
でもセンスが如実に出るので、やりすぎると村上春樹みたいに好き嫌いがはっきり分かれそう。
メリハリのテクニック
表現の豊かさ、文体のリズムも大事だが、最後まで読み通させるためには段落や作品全体にメリハリをつける必要がある。
遠景と近景を使い分ける
映画のカメラワークがそうだが、街や自然の遠景から始めて、だんだんと主人公にスポットが移る。
文章だと、まず大枠の状況説明をしてから、詳細であったり、内面であったりを深掘っていく。
人間の認知も基本的にはそんな大枠→詳細の順番なんだろうけど、逆にナイフを突きつけられたら切っ先にしか目がいかないように、読者・視聴者の視線をうまくシミュレーションしていきたい。
クローズアップとスローモーションを使う
遠景・近景の話と似ているが、
・同じような意味の表現を重ねる(ペンキの上塗りのイメージ)
・短文でたたみかける(ハッチングのイメージ)
・読点を多用した長文で詳しく述べる(油絵のイメージ)
こんな感じか。
個人的には、章のはじめ、段落のはじめに短文を多く配置して、中央のクライマックスで長文を使うようにしている。
「読点を多用した長文」ってのはまあ読みにくいからね。これが許されるのは谷崎潤一郎だけ。